相続方法の決定
相続とは、亡くなられた個人(被相続人)が有していた財産上の権利義務を相続人に承継させる制度ですが、財産にはプラスの財産も有れば借入金などのマイナスの財産も有ります。
そこで、マイナスの財産がプラスの財産よりも多い、又は判明していない場合などのために、相続方法には全ての財産債務を無限に承継する単純承認のほかに、相続放棄や限定承認といった方法があります。
ただし、令和2年度の相続放棄は234,732件であるのに対し、限定承認の申述数は675件しかなく選ばれている方はごく僅かとなっています。
単純承認
単純承認とは、相続人が被相続人の土地の所有権等の権利(プラスの財産)や借金等の義務(マイナスの財産)をすべて受け継ぐ、つまり全ての財産・債務を受け継ぐ方法をいいます。
特に手続きの必要はなく、相続人が相続財産の全部又は一部を処分した場合や、相続放棄や限定承認を選択しなかった場合には自動的にこの単純承認となります。
相続放棄
相続放棄とは、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない方法をいいます。相続放棄をするには、
①相続の開始があったことを知った日の翌日から3か月以内に、
②被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、
③相続人(法定代理人、特別代理人)がその旨の申述を行う必要があります。
3か月以内に相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てにより、家庭裁判所はその期間を伸ばすことができます。
限定承認
限定承認とは、被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ方法をいいます。
例えば財産が1,000万円あり、債務が5,000万円あった場合、弁済しなければならない債務は1,000万円となります。
限定承認をするには、
①相続の開始があったことを知った日の翌日から3か月以内に、
②被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、
③その旨の申述を相続人全員が共同して行う必要があります。
相続人が複数いる場合、その一部の人だけで限定承認の申述をすることはできません。
相続放棄をした人は,相続人ではなかったものとみなされるので,それ以外の共同相続人全員で申述することになります。